11月7~9日に東京で開催された『ユーザーに優しいウェブサイトの提供』をコンセプトに開催されたWeb Direction Eastにいってきました。
アジアでは初開催となりましたが、そろったスピーカー陣は非常に豪華でした。
講演内容の詳細については、各プレスのサイトにてレポートがありますので、今回は感想ということで感じたことなどをまとめてみます。
『ブラウザの多様化でみる最良のウェブ開発』
CSSの開発に大きく関わり、Reset.cssなど開発者の人では知らない人がいないであろうツールやテクニックを考案したエリック・メイヤーによるお話。
今回のカンファレンスではそういったCSS中心の話ではなく、Google Chromeというウェブブラウザの登場の話からはじまり、これからのウェブ開発、ウェブがどうあるべきかという話でした。
HTML5、とくにCanvasの可能性についての話から、今の段階でもCanvasを採用できる術としていくつかのJavascriptライブラリが紹介されました。
結局こういった表現を拡大できるものはブラウザがネイティブで実装されていなければ、Web開発者の人たちはなかなか採用できないし、Javascriptライブラリを採用しても重くて使えないという思いがあります。しかしSafariや次期firefoxなどはそのJavascriptエンジンを搭載するということで、紹介されたJavascriptライブラリを気兼ねなく採用して表現の可能性が広がると感じました。
また今後大きく期待されるのはモバイル/モバイルブラウザの発展で、本当の意味でのWebアクセシビリティ=誰でもアクセスできるウェブが実現であるということでした。
この点について、氏は冒頭で、Google Chromeが Webkit(Safariに採用されているレンダリングエンジン)を採用した点というのは、WebkitがiPhoneというモバイルに採用されているからだと述べていました。
GoogleのAndroid + Webkit 、また何かあたらしい動きがあるかもしれませんね。
『あらゆるデバイスに対応できるウェブデザインの考え方』
スピーカーのダン・セダーホルム氏はMTV.comなどの制作実績もあるSimplebitsのデザイナーです。
今回はhttp://icedorhot.com/というサイトをモデルにして、Webデザインにおける「A」から「Z」(実際には「U」まで)までのテクニックやノウハウの紹介です。
最近の制作トレンドとしてあるclearfixの活用や、jQueryの採用、グリッドを意識したレイアウトから、CSS3を採用したテクニックなどのサンプルが紹介されており、どれもすぐに使えそうなものばかりだと感じました。
しかし実際にはIE6といった今や古いバージョンだけどユーザーが多いブラウザに対しては反映されないものも多いわけなのですが、重要なのは「Progressive Enhancement」という考え方であると感じたセッションでした。
どのブラウザでもWebページの見た目が一緒であるという必要はなく、情報を損なわれない範囲で、最新のブラウザに対しては最新の機能を提供するというのが可能性を広げるのに重要なことです。
この取り組みについては、弊社でも直ぐに取り入れていきたいと思います。
『使い勝手と見やすさを両立するAjaxを使ったサイト設計』
ジェレミー・キース氏は後に出てくるアンディ・バド氏と同じイギリスのコンサルティング会社「Clearleft」に所属するWeb開発者です。
Ajaxのエキスパートとして標準化を進めている氏は、あらためてAjaxは「サーバーとコミュニケーションし,新たな情報をユーザーに提供しつつ,ページがリフレッシュされないこと」という再定義をし、何かしたら格好の良いエフェクトをすることなどがAjaxではないということからセッションがはじまりました。
このセッションにおいても「Progressive enhancement」という考え方があり、Javascriptオフ環境や未対応環境であってもコンテンツが提供できるように実装しなければならないということが強調されていました。
まずはHTML+CSSでサイトをつくり、そこにAjaxを実装するというのが必要だということです。
大きなところに実装するのではなく、ブログのコメントの投稿がページ更新なしに表示されるというような小さなところに実装することで、ユーザーに待ち時間を与えない・感じさせないようなところに大きな効果があるということでした。
要は使いどころということで、Ajaxの実装がマイナスとならないよう考えるということですね。
『高効率・低コストで行うユーザビリティテストの仕組み』
アンディ・バド氏はジェレミー・キースと同じ「Clearleft」社のクリエティ部・ディレクターで、デザイナーとしてもたくさんの経歴があり、ユーザビリティのエキスパートでもあります。
本セッションでは日常にあるシステムに対してユーザーはどう考えているかという話から、ユーザビリティテストをおこない大きな売上をあげた事例の紹介がありました。
またユーザビリティテストと一般的に呼ばれるものは、高額なアイトラッキングシステムや、ラボを利用した研究的で大きなものを想像してしまうのですが、氏はもっと手軽にどこでもできるテスト手法について話をしてくれました。
質ももちろん重要ですが、できるかぎりテストの回数をこなし、すぐにそのフィードバックをシステムに反映させるスピードの方がもっと重要になります。そのためゲリラユーザビリティテストと名付けられた簡単にテストをおこなう方法を進めています。
それを便利におこなうツールとして、Clearleft社のSilverbackというソフトを紹介されていましたが、これについては EC studio で販売しているカムタジアスタジオというソフトでもこれはおこなうことができるのではと考えています。
『Web標準的ブラウザのグラフィックのススメ』
SVG・Canvasについての可能性は、エリック・メイヤー氏も語られていたのですが、ダグ・シェパーズ氏はW3CのメンバーとしてSVGの開発と普及の先頭に立って引っ張っている人物です。
HTMLとjavascriptで2D,3Dのベクターグラフィックスを描画できる技術ですが、正直なところ「これをどこに使えば」という気持ちがないわけではありません。たとえば単純にFlashに成り代わるというものでもなく、成り代わる必要も感じないわけでもありません。
しかし実際にすでにGoogleMapにもSVGは採用されており、同じように地図の描画やグラフの描画などが、ユーザーの環境におけるFlashPlayerの有無やバージョンに左右されず、ブラウザの環境で表現できるならそれにこしたことはありません。
EC studio でも数値データを提供するツールをいくつか提供していますが、それにこういった技術が採用される日は遠くないかもしれません。
『Web上における情報データの可視化』
マイク・ミジャースキー氏はステイマンデザインという会社のCTOとしてデータビジュアライゼーションと呼ばれる分野での実績を非常に多くあげています。
代表的なものとして、Oakland Crimespottingというオークランド州の犯罪状況マップサイトがあります。
その他数々の実績の紹介やデータビジュアライゼーションの実例を取り上げていたのですが、データビジュアライゼーションにおいて重要なのは「Live, Vast, and Deep」という点で、データが最新かつ広く深いことであると述べていました。それらを可視化する上で、さらにユーザーが利用しやすいようユーザビリティが求められるということです。
彼らの実績にはただ使えるだけでなく、表現の心地良さというところではユーザーエクスペリエンスというものも欠かせないようになっていると感じます。
データに対して関心を持つユーザーが集まるわけですが、どんどん使ってデータを掘り下げていく上でこういったストレスのないリッチな体験を与えることもまた重要なのでしょうね。
まとめ
今回のカンファレンスで話された内容は、近しくすぐに仕事に取り入れられるものから、遠い技術であるように思えるものもありました。
しかしいずれにせよこうした場で、Webの先人たちの話を生で聞くというのは大きなインスピレーションを得る非常に貴重な機会でした。
その翌日、翌々日のワークショップではエリック・メイヤー氏、アンディ・バド氏から直接CSSやユーザビリティテストの指南を受け、これらもまた大きく勉強になりました。
また来年も開催されるということで非常に楽しみにしています。
その他当日の詳しいレポートは下記もご覧ください。
レポート:「Web Directions East 2008」カンファレンス レポート|gihyo.jp … 技術評論社
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